プロレス興行をパソコンや携帯に配信、ネットで急成長し日本に進出

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IT Pro の記事
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/JIREI/20080630/309737/

 公式サイトには毎月1450万人以上のユニークユーザー(来訪者)が訪問、毎月5億以上のPV(ページビュー)を獲得――。インターネットを駆使した新しいビジネスモデルで急成長している米プロレス興行大手、WWE(ワールド・レスリング・エンターテインメント)が日本進出を本格化し始めた。

 今年1月に日本法人WWEジャパン(東京・渋谷区)を設立、2月には有明コロシアム(東京・江東区)でイベントを開催した。既に日本語サイトも立ち上げている。6月に来日したシェーン・マクマホン副社長は「アジア市場、そのなかでも特に日本は我々のグローバル戦略において非常に重要だ。今後もパブリックビューイングイベントを開催するなどして、コアなファンから一般層まで幅広くWWEの知名度を上げていきたい」と語る。

 WWEは2007年12月期、連結売上高4億8570万ドル、純利益5210万ドルを記録。560人の社員を抱え、本社内には自前のテレビスタジオを持つ。米国外の売り上げは過去5年間、年率20%ずつ伸びており、現在では売り上げ全体の25%を占めている。1999年には米ニューヨーク証券取引所への上場も果たした。全国各地で開く興行収入を主な収益源としている日本国内のプロレス団体とは異なり、積極的なネット戦略で業績を拡大してきた。

 マクマホン副社長は「毎月5億以上というPVの数はヤフーのランキングでも上位に入っている」と話す。ストリーミング(動画のリアルタイム配信)サービスや映像コンテンツをネットで購入できるVOD(ビデオ・オン・デマンド)サービス、携帯電話を使ったコンテンツ配信やレスラーの人気投票など、デジタルメディア分野を成長領域と位置付け、様々な形でネットを活用している。

 「テレビ局と組んで興行をテレビ放映することもあるが、映像コンテンツの権利はすべて自社で保有している。だからこうした多面的な展開が可能になった」(マクマホン副社長)。興行による収入は売上高の23%に過ぎないという。プロレスをはじめ日本のスポーツビジネス界では、テレビ局などに放映権を渡し、放映権料を得る形がまだ一般的だ。興行団体が自ら映像コンテンツの権利を管理するのに加え、ネットを使った配信事業を独自に行っているケースは珍しい。WWEの日本市場進出が成功すれば、日本の興行ビジネスのモデルを変える可能性がある。

 今後の具体的な展開としては米国同様、試合から記者会見まで様々なコンテンツを無料でストリーミング配信することを検討中だ。また、315円均一で販売しているVODについても、「現時点では数年前の古いコンテンツが多いが、最新の映像の比率を高めていく」(WWEジャパン)方針だ。

 日本ではK-1などの総合格闘技がプロレスを上回る人気を持つが、「総合格闘技はスポーツ、こちらは純粋なエンターテインメント。視聴者としては両方を見られたほうがいい」と、経営の傍ら、自らレスラーとしてリングに上がるマクマホン副社長は意に介さない。「物語性や音楽、照明などで凝った演出を駆使してドラマチックな戦いを見せられれば、日本の格闘技ファンにもより広く受け入れてもらえるはずだ」と話す。

 テレビ局と広告代理店が非常に強い日本国内では現状では成立しにくいビジネスモデルだが、海外からのコンテンツでこういった流れになってくると業界も面白くなるか。

 

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