補償金支払い義務者をメーカーに、権利者側が経産省と交渉の構え

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Internet Watch の記事
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/07/24/20367.html

 音楽や映像などの権利者団体で構成される「デジタル私的録画問題に関する権利者会議」が24日に会見を開き、私的録音録画補償金制度の支払い義務者をメーカーにすべきと訴えた。また、補償金制度の見直しに合意しないメーカーの強気な姿勢の背景には「経産省の介入がある」と指摘。補償金制度の見直しを巡って、今後は経済産業省との交渉も辞さない構えを示した。

しばらく経産省とやり続けることになるだろう

 7月10日に開かれた私的録音録画小委員会では、電子情報技術産業協会(JEITA)の委員が、「DRMが施されているコンテンツなどの私的複製は、権利者の大きな経済的な損失が認められない」と発言。地上デジタル放送の新録画ルール「ダビング10」についても、「DRMが機能している範囲では、契約で許諾する私的複製と同じである」として、権利者への補償は不要であると主張していた。

 この点について実演家著作隣接権センター(CPRA)の椎名和夫氏は、「ダビング10などのように契約によって対価を徴収できない分野で、なぜ不利益が発生しないと言えるのか」と疑問を示す。また、DRMの普及に伴い補償金制度を縮小・廃止する前提で、当面は補償金制度を継続する方針を盛り込んだ「文化庁案」にJEITAが反対したことについても、「結局は、議論を振り出しに戻す『ゼロ回答』。2年間にわたる議論が、徒労に終わりかねないのは残念」と失望感を募らせた。

 椎名氏は、私的録音録画補償金制度の見直しに合意しないJEITAの“ちゃぶ台返し”の背景には、経済産業省の介入があると指摘する。「経産省は、メーカーだけでなくコンテンツ産業も所管する役所。これまでは補償金を巡る議論で何の調整も行わなかったが、土壇場になってメーカーの意を受けて介入してきた。コンテンツの権利者を屈服させようとしたことは、極めて由々しい事態だ。個人的には、PSE法が成立した際、『中古楽器が販売できなくなる』となったときに経産省と事を構えたが、経産省は大企業の方しか見ていなかった。結局、強きに流れてばかなことをやる体質は、何も変わっていない。今回もしばらく経産省とやり続けることになるだろう」。

補償金の支払い義務者をメーカーに

 補償金制度の見直しに合意しないJEITAの姿勢について椎名氏は、「補償金の負担のサイクルからメーカーが逃れようとしている」と非難。「メーカーがこれだけ補償金に強くこだわるのは、補償金の支払い義務者は事実上メーカーであるから」として、今後はユーザーに私的録音録画を可能にする機器・記録媒体を販売することで巨大な収益を得ているメーカーを、補償金制度の支払い義務者にすべきだと訴えた。また、「その話をする相手は今後考えた方がいい」として、経済産業省と交渉する姿勢も見せた。

 「メーカーは、補償金がかかれば製品の値段が上がると説明するが、おそらくそれは間違い。例えば、パナソニックのブルーレイディスク(BD)レコーダー『DMR-RB500』の価格を量販店と価格比較サイトで調べたところ、最安値と最高値の価格差が4万6806円もあった。仮に最高値で補償金額を算出してみると759円。メーカーと量販店との取引価格は、取引実績や市況で決まるので、759円が小売り価格に影響を与えることは少ないだろう。また、買い物の仕方次第で4万以上も損したり得したりする中で、759円が『法外な金額』とはいえない。

JEITAは補償金制度の自然死を待つために時間稼ぎをしている

 さらに椎名氏は、「瀕死の状態にある」という補償金制度の窮状を訴えた。私的録音録画補償金の徴収額は、2001年の 40億円をピークに右肩下がりを続け、2007年では12億円までに縮小したという。「権利者としては少しでもこの状態から脱することができればと思い、文化庁案を支持してきたが、もはやその意味合いは大きく薄れたと言わざるを得ない。JEITAにしてみれば、法改正に反対すれば補償金制度は自然死を迎えることから、明らかに時間稼ぎをしている」。
 また、日本音楽著作権協会(JASRAC)の菅原瑞夫氏は、補償金の対象にすることが決まったブルーレイディスク(BD)についても、「いまだに政令指定を受けていない」と指摘。北京五輪商戦として販売されているBD製品が、補償金制度の対象外になっている現状を示した。「政令指定後には補償金額の料率の交渉もある。そこでJEITAが延ばすとなると、実質的にはどうなるんだろうかという問題がある」。

 また、iPodをはじめとする携帯音楽プレーヤーを課金対象とする、いわゆる“iPod課金”については、MDやDATなど補償金額が少ない物を補償金の対象から外した上で、携帯音楽プレーヤーを新たに対象とすることも検討していると言うが、「そのことも(JEITAに)否定されている」状況だという。

 「フランスではiPhoneに2月から補償金がかかっていて、速やかに動いている。なぜ日本はこれができないのか。それには当事者間の合意が前提となるが、JEITAが『ノー』と言い続ければ合意は永遠に訪れないことになる。iPod課金にも法改正が必要となるが、それまでに補償金がどんどん少なくなっていく状況をどう考えていただけるのか」(菅原氏)。

JEITAの「そんなの関係ねぇ」発言は社会を愚弄するアウトローな主張

 日本映画製作者連盟の華頂尚隆氏は、「もし権利者側が地上デジタル放送のコピーネバーを主張していれば、機器や記録媒体は売れないのでメーカーの利益はゼロ、権利者もコピーが行われないので補償金による対価もゼロ、消費者の利便性もゼロ。ネガティブだが、フェアな構図」との持論を展開。しかし実際にはダビング10が解禁され、消費者とメーカーだけに利益がもたらされていると指摘し、「権利者にも適正な対価の還元があってもいいんじゃないか」と述べた。「JEITAは『デジタル環境でのコンテンツ流通はWin-Winであるべき』と発言しているのに、なぜかダビング10では補償は不要と言う。『そんなの関係ねぇ』みたいな感じだ。」(菅原氏)

 華頂氏は「そんなの関係ねぇつながりで」として、JEITAが7月10日に開いた記者会見で、「BD課金は、ダビング10スタートのために文科省と経産省が決めたこと。ダビング10開始は歓迎するが、対象機器についてJEITAが申し上げたことはない」と発言したことを指摘。「勝手に決めたことに従う意思がないというアウトローな主張。社会全体を愚弄するする看過できない発言だ」と厳しい非難を浴びせた。「両省の大臣は、ダビング10の環境整備のためにBDを課金対象にすると言っている。BDは、ダビング10の補償以外の何者でもない」。

 このほか菅原氏は、補償金制度が著作権を保護する文化保護制度のひとつであるとして、補償金制度に反対するJEITAの姿勢を改めて批判した。「JEITAの一連の発言や対応を見ると、文化保護の制度が要らないと言っているに等しい。そのような保護の制度がなぜ不要なのか、JEITAに証明してもらいたい」。

 「JEITAは議論が尽くされていないと言うが、2007年では17回の小委員会が開かれ、うち補償の必要性は8回も議論が出た。尽くされていないというのは、自分たちが発言していないのか、自分が思うような進み方がないと、議論がされていないというのかわかりませんが、いかがなものでしょうか。」

これまで表面上に出てきている記事などを読んでも、論理性で言えばJEITAのほうにはほとんどないに等しく、それでいて強気に議論を拒否している状況なので、矛先を経済産業省に変えるというのは正しい方法か。

 

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