グーグルがユーチューブのユーザーID秘匿求める、証拠書類提出で

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NIkkei Net の記事
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/media/djCGG6834.html

 ニューヨーク(ウォール・ストリート・ジャーナル)米グーグル(Nasdaq:GOOG)の弁護団は3日、傘下の動画投稿・配信サイト、ユーチューブのユーザーを特定できる可能性のある情報の秘匿性を事前に高めることについて、米メディア大手バイアコム(NYSE:VIA)(NYSE:VIAB)に許可を求めた。グーグルは、ユーザーがどの動画を視聴したかの記録であるユーチューブの「ユーザーログ」を、判事の要請に応じてバイアコムに提出することになっている。

 この前日、ニューヨーク連邦地裁のルイス・スタントン判事は、グーグルに対する10億ドル規模の損害賠償を求めてバイアコムが提起した著作権侵害訴訟に関連して、ユーチューブのユーザーを結びつけるデータベースを、ユーザーがユーチューブを通じてこれまで視聴した全動画クリップとともにバイアコムに手渡すように、グーグルに命じていた。

 バイアコムの広報担当者は3日、同社がグーグルに要求したデータは、ユーザー個人の特定ではなく「ユーチューブとグーグルを相手取った訴訟において、当社の主張を立証する目的のみに利用する」とコメントした。また、このデータは「裁判所の保護命令に従って、極秘情報として取り扱う」と付け加えた。

 バイアコムは、ユーチューブとグーグルが著作権を侵害しているとする自身の主張を強化するためこのデータを要求している。特に、同社の著作権で保護された動画が他の素人作品に比べてどの程度視聴されているかを見極めたい考え。このデータは、バイアコムの著作権で保護されたコンテンツ(情報の内容)が、ユーチューブへのユーザーの呼び込みに寄与し、グーグルが金銭的な恩恵を受けているとする原告団の主張に関連づけられる可能性もある。

 ユーザー情報に関する議論は、ユーチューブのデータベースからいかに多くの情報が収集できるか、という議論が高まるなかで浮上した。データベースには、ユーチューブで動画を視聴するたびにユーザーに割り当てられる個別のログイン認証コードと、ユーザーのパソコンのインターネット・プロトコル(IP)アドレスが対にして集積されている。

 データベースには個人名や電子メールアドレスなど、個人を識別できる情報は含まれていない。ただ、グーグルにデータの提出を強制した裁判所の判断は、それがインターネットを通じて動画を視聴するユーザーの視聴パターンを暴露する可能性もあると危ぐするプライバシー擁護派の批判をすぐさま招いた。プライバシー保護論者らは、例えば、ユーザーがIDに自分の名前の一部を使用する例が多いと指摘する。

 グーグルの弁護団はバイアコムにあてた3日付の書簡で、法廷の請求が「著しい量の公的な抗議」を招いたことに言及。提出前にデータ中のユーザー名とIPアドレスを編集する許可を求めた。

 バイアコムの広報担当者明は声明で、同社がグーグルの懸念への対応を図っているとしたものの、書簡に書かれた具体的な要請に関するコメントは避けた。その上で「われわれはこの件に関する協力を続ける。バイアコムは、強力な機密保護を備えた枠組みを構築することを約束する」と語った。

 訴訟書類によると、グーグルは、バイアコムのユーザーデータの提出要請に対し、バイアコムが「ユーザーのログインIDやIPアドレスに基づいて、ユーチューブのユーザーの視聴・動画アップロードの習慣を把握できるようになる」として反論していた。

 スタントン判事は、プライバシーに関する懸念が「憶測的」とし、データベースは「個々の動画がさまざまな期間にどのような頻度で視聴されたか」を示す、現存する唯一の記録である、と書いた。

 プライバシー擁護派は、グーグルとユーチューブがそのユーザーと、ユーザーの利用するオンラインサービスに関して膨大なデータを保存していることを、こうした議論は思い出させる、と指摘。ユーチューブの広報担当者は、一部市場で特定の種類のコンテンツを禁止するより、法律に順じるため、またユーザー体験を向上させるため、同社はIP情報にこだわっている、とコメントした。

 スタントン判事は2日、この事案の一環として、ユーチューブにはサイトの設計図であるソースコードを提出する必要はない、と判断した。

 今回の裁判所の判断に対し、グーグルの主任弁護人であるキャサリン・ラカベラ氏は、グーグルが「ユーザーの私的な動画や、当社の検索技術にバイアコムがアクセスすることを退けるなど、裁判所が証拠開示手続きにある程度の制限を設けたことを歓迎している」と述べた。また、「視聴履歴に対するバイアコムの行き過ぎた要求を裁判所が認めたことに、われわれは失望した」と語った。

この件に関しての、双方の主張と判例、実際に提出されるデータの書式などは、今後の動画配信ビジネスにおける著作権侵害、および個人情報保護の観点などから重要な前例となる。

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