Stage6閉鎖の裏にシリアス・ドラマと愚行の数々

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Tech Crunch Japanse の記事
http://jp.techcrunch.com/archives/serious-drama-and-lots-of-stupidity-behind-stage6-shutdown/

昨日(米国時間2/25)サンディエゴの「DivX」が人気動画サイト「Stage6」の閉鎖を発表した。 サイトは月間ビジター1740万人。みんな満足していただけに、利用者は驚きと落胆をもってニュースを受け止めている(閉鎖発表の投稿には5000件を超えるコメントがついている)。

DivXのサイト閉鎖の理由を巡っては「海賊版対応の問題」というものから、「HDコンテンツを全部配信するのにかかるCDNコストが雪だるま式に 嵩んだ」ことまで、いろんな噂が飛び交ってるが、複数のソースから得た情報によると現実に起こったことはDivX取締役レベルのエゴの醜いぶつかり合い だ。そのとばっちりでチームのスタッフが粗方、会社を単に辞めてしまった。つまり早い話が、DivXは絶対勝利間違いなしなところから一転、敗北したので ある。

まず最初に経緯をざっくり振り返ってみよう。

- DivXは2006年後半上場に踏み切る直前に、DivXコーデックのケーパビリティを披露する手段としてStage6をローンチし た。PRらしきことは何もしなかったのにサイトにはあれよあれよという間にユーザーが集まり、ベータ版公開の2007年半ばには利用者が数百万人、ページ ビューは数千万件という人気サイトになっていた。なにしろキーは高品位な動画。―ユーザーは迷いもなくこれに飛びついた。

DivX共同ファウンダー兼CEOのJordan Greenhallにはヒットの確かな手応えがあった。そこでStage6売却の可能性を探ることに決め、投資銀行Montgomery & Co.を雇い、買い手候補探しに乗り出した。その一方でベンチャーキャピタリスト相手には部門をスピンオフしたら出資する気はないかというアイディアの売り込みも始めた。利益の衝突を避けるため彼はDivXのCEOを辞め、 代わりにプレジデントKevin Hellが会社の経営を引き継いだ。Darrius Thompson(DivX共同ファウンダー)、Mark How(DivX VPビジネスディベロップメント部門VP)、Mark Chweh、Chester Ngほか、DivX社員約20人が彼に加わった。Stage6では全員が全員、「共同ファウンダー」の肩書きを共有していた。

Montgomeryは2007年下半期ずっとかけてStage6を売り込んだが、買い手からはさほど関心は得られなかった。が、VCたちはスピン オフに出資するアイディアとなると熱心に投資したがった。11月になる頃には投資後の企業価値$90M(9000万ドル)をベースに$20M(2000万 ドル)の投資を行うことでCrosslink Capital、Sofinnova France、Mission Venturesが約束し、さらに戦略投資家から$5M(500万ドル)、プラス“友人・家族”から$2M(200万ドル)入ることが確実に。それやこれ や合わせてStage6は$27M(2700万ドル)のラウンド調達完了に向け準備を進めた。DivXは投資が入る新会社の所有権の20%を確保するはず だった。

そのまま順調にいけばDivXは新会社の株式の相当部分を得るだけでなく、著作権料だけで推定月額$1M(100万ドル)もの運営費用を経費として帳簿に計上し、Stage6は2008年収入のほとんどをDivxに償還する手筈になっていた。

その収入は些細どころではない。Stage6で動画視聴をしたいユーザーは、まずDivXプレイヤーをダウンロードしなければならないが、このダウ ンロード・パッケージにオプションとしてYahooツールバーが含まれている。YahooからDivXへの支払いは年間$16M(1600万ドル)にも上 るが、われわれの情報源によるとこの額の半分、およそ年間$8M(800万ドル)がStage6のツールバーからのものだという。しかもその割合は上昇し ており、2008年のツールバー収入は$10M(1千万ドル)に達し、Stage6はほとんど損益が均衡すると見込まれていた。

そして昨年11月末。DivXの取締役会でStage6のスピンオフとベンチャー資金調達の承認が議題に上った。ところが、この土壇場になって取締役会はスピンオフをキャンセルしStage6を支配下に置き続けることを選んだ。

理由は明らかでない―Stage6の評価額を聞いてびっくりし、スピンオフさせるのが惜しくなったのかもしれない。それとも長期的にみて、 Stage6からのツールバー収入が手放せないと考えたのかもしれない。聞いたところによると、ここで激しいエゴの衝突が起き、結局Stage6の独立は ご破算になった。が、このとき同時にStage6のファウンダーたちも辞任してしまったのだ。DivXはGreenhallが辞任したことを告げる短い告知を出し、そこで 「当社がStage6の将来に関していかなる方針を採るべきか考慮するためにさらに時間を必要とする」と付け加えた。

でもまだその時点では誰もがDivXがそのままサイトの運営を続けるものと思っていた。ところが12月から1月にかけてDivXは動画ストリーミン グの運営コストと、システムの面倒を見るキーになる技術者がいないことがまたしても心配になったらしい。今から3週間前にDivXはGreenhallに 最初のスピンオフ・プランに戻る気はないかと尋ねたという。Greenhallは断った。

そこでDivXはStage6の閉鎖を決めた。閉鎖によって何百万というDivXのダウンロードも、それにともなうYahooからの収入も水の泡と なった。結局DivXは赤ん坊もろともタライの湯―何百万ドルもの収入と何千万のユーザー―を捨ててしまったわけだ。DivXの取締役会と経営陣は、ひと 言でいえば、バカというに尽きる。投資家も同じ意見のようだ。DivXの株価は過去最低を記録している。

DivXはこの記事に関してコメントを拒絶した。

単に運用コストの問題や、違法アップロードの問題が主な理由と受け取ってただけに、この記事は非常に興味深い内容。
上記の記述が事実ならば非常に残念。高い事業評価を受けてスピンアウト可能な状況であったにもかかわらず、取締役の判断ミスでどうにもならなくなるのは、動画配信ビジネスではよくある話。

技術的なことをよく理解したうえでしっかりと効率的に運用できるスタッフがいることが、動画配信のビジネスではきわめて重要。この業界には「半可通」な経営者が多くてうんざりすることも多い。


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